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にっぽんの原始布
 豊かな自然に恵まれた暮らしの中で、人々は身の回りの植物や山に自生する木の皮・蔦・草木を採取、栽培し繊維を採り、糸にして、素朴で野趣あふれる布がつくられてきました。
 この自然の布は、絹や木綿の歴史よりも古く「古代布」とも呼ばれ、ひとつひとつの工程に緻密な技と根気を要求され、織り上げるまで全て手作業で仕上げます。

丹波布【兵庫県】

丹波布たんばぬの

手紡ぎ、手機による木綿織物。手紡ぎの木綿糸が用いられますが、緯糸のところどころにくず繭から手紡ぎした「つまみ糸」が混ぜられます。
植物染ですが、色は藍・茶色・緑色の3色のみ。この3色の濃淡で縞柄や格子柄を表します。
ほかの木綿織物とは違う、ざっくりとした風合いと美しさがあります。「たんばふ」とも読み、「丹波木綿」とも称されます。

越後上布【新潟県】


越後上布の軽さと透けるような薄さは、糸の細さによるもので、苧麻の皮を剥ぎ、繊維だけにして乾燥させたもの(青苧)を、さらに爪で裂き、口に含みながら撚りつないでいきます。
1反分の糸を績むのに1ヶ月以上かかるといわれ、昔ながらのいざり機(地機)で織り、細く乾燥すると切れやすい麻糸の手織作業は、3ヶ月以上かかるといわれています。
織り上がった布を雪晒しすることで、繊維が柔らかくなり、夏に得られる涼感は厳しい寒さに耐えて織り上げられた布ならではのものです。

しな布【山形県】


落葉広葉樹である“科(しな)の木”の樹皮を剥ぎ、内皮をとり乾燥させ、水に浸し灰汁で煮、米ぬかに漬け、しな裂きをして、績み、そして撚りをかけ糸にして、機で織り上げます。日本の衣の原点でもあり、縄文・弥生時代からの製法を今に伝える貴重な織物です。
すべての工程が手仕事で、完成までに1年という長い時間と手間を必要とします。ざっくりとした素朴な手触り、自然な色合い。特に通気性がよく、軽く水にも強く使い込むほどに木肌の艶がでてきます。山里の暮らしの中で、脈々と受け継がれてきた伝統と、気の遠くなりそうな根気のいる作業を経て、生み出される素朴な風合いの布には、力強い生命力が溢れています。

楮紙布(とうしふ)【新潟県】


楮紙布は桑科の植物で、和紙の原料にも使われる楮糸と紙糸で織り上げられます。
経糸は、和紙をテープ状にカットした後に、撚りをかけた紙布糸を用い、緯糸には丁寧に手績みされた楮糸用いて、一本一本手で織り上げます。紙糸の持つ柔らかさと、楮糸の持つ温和な光沢と深く渋みのある色調。時を重ねるごとに、落ち着いた色合いが生まれてきます。素朴で野趣溢れる自然布の醍醐味をお楽しみいただけます。

楮布(こうぞふ)【新潟県】


雪上にて数日間晒した楮を、蒸し上げて柔らかくて樹皮を丁寧に手績みした糸を手織によって織り上げます。楮のくすんだ色合いの中の、温和な光沢と深く渋みの色調は時が経つほど、落ち着いた色合いが出てきます。同じ甕で同じように染めても、同じ色が出るとは限りません。それぞれ違う特色のある地風は自然の恵。楮布の持ち味です。

藤布【京都府】


山野に自生する藤蔓の皮を剥いで、糸を作り織り上げた布を「藤布」と言います。藤布の歴史は長く、万葉集の中にも「大君の塩焼く海人の藤衣」と藤布が使われたことが詠まれています。また、元弘2年(1332年)に幕府によって、隠岐に流された後醍醐天皇が藤の苗木を隠岐に持参されたという逸話もあり、藤を愛された天皇が藤布を身に纏われ、都に思いをはせられたとも語られています。
古代日本の織物である藤布は丹後地方でその技術を伝えています。

紙布【新潟県】


和紙を細く切り、こより糸にして織った布を「紙布」といいます。経・緯ともに紙を使った諸紙布もありますが、経糸に木綿や絹を使った綿紙布や絹紙布も多く見られます。
紙は保温性があり、軽く汗取りもよく、乾きも早く水に通せば通すほどに丈夫になる特性を持っています。

植物から繊維を採取し、布に織り出す・・・。
原始布は、有史以前から連綿と織り続けられてきた布です。
その力強さは、本物だけが醸しだす・・・。
自然の恵みから作り出される布を魅力と素晴らしさを存分にお楽しみください。
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